クラシック音楽散歩 · La promenade classique de Kanako
パリがベートーヴェンを動かした時| 創造の喜び ~ ベートーヴェンと《ピアノ・ソナタ》~
Derrière une sonate allemande, un piano venu de France.
ドイツ生まれのソナタの裏には、フランスから来たピアノがある。
Bonjour! 奏子です。
クラシック音楽散歩、番組では「パリがベートーヴェンを動かした時」というタイトルでお届けしました。そのなかでベートーヴェンの《ピアノ・ソナタ第21番》が登場しましたね。第21番とありますが、実は32番まであります。(しかも、各曲それぞれ3~4楽章あり、それでひとセット×32曲なのです。)
ベートーヴェンが活躍していた当時、スタンダードだった楽曲形式に「ソナタ」というものがあります。《ピアノ・ソナタ》はその形式を使って作曲された曲のことを指します。ベートーヴェンは、32曲のこの《ピアノ・ソナタ》を創作のほぼ全ての時期において作曲しているのです。その意味で、彼にとってライフワークのような作品と言えるでしょう。そのどれもが個性豊かで、駄作がひとつもありません。それが証拠に、現代でも多くのピアニストがベートーヴェンの《ピアノ・ソナタ》の全曲録音をすることに、ある種の畏敬と尊敬を持っているのです。ピアニストたちにとって登るべき山、ともいえるでしょう。
ベートーヴェンの作曲家人生における特筆すべき点として、比較的満遍なくさまざまなジャンルの曲を作っていることが挙げられます。そしてどのジャンルでも傑作が生まれ、後世に残る作品を生み出しています。ピアノ、室内楽、オーケストラ(交響曲を9つ作り、彼の死後10番目の交響曲を作曲することが長らく音楽史における命題になっていたほど)、オペラ、歌曲など。そのように作品のジャンルを行き来しながらも常に戻ってくる場所、それがピアノであり《ピアノ・ソナタ》だったのです。まさに彼の創作の腕試しの場、表現のアップデートの場でした。
その作曲技術を洗練させるための一助となったのが、ピアノという楽器の発展です。当時のピアノはまだ現在と同じ性能を持ちあわせておらず、進行形で改良がなされていました。現代でも、インターネットやAIの台頭がクリエイターたちを刺激するように、当時気鋭の作曲家であったベートーヴェンが、"今までにないピアノ"に食いつかない訳がありません。フランスのエラール社のピアノを使って作曲した作品のひとつが、冒頭で触れた《ピアノ・ソナタ第21番》だったのです。改良点として、連打がしやすくなったこと、音の大小の幅が広いこと、鍵盤の数が多いことなどが挙げられます。ベートーヴェンはそうした特徴を嬉々として楽曲に盛り込みました。
ドイツ人であるベートーヴェンですが、実はフランスのピアノが彼の創作の原動力になっているなんて、興味深いですね。ちなみに、《第21番》の冒頭は連打で始まるのがとても印象的なのですが、その小気味よさに彼の微笑を感じる? というのは解釈として少々飛躍しすぎでしょうかーー。