クラシック音楽散歩 · La promenade classique de Kanako

“月の光”をめぐる散歩 ~月に想ひ、月を想う~

2026-09-29 · 第657回のエピソードを聴く

Bonjour! 奏子です。

 クラシック音楽散歩、番組では「月の光」というタイトルでお届けしました。みなさんは最近月を眺めましたか? 9月には1年で一番月が美しいとされる中秋の名月もあったので、いつもよりは夜空を意識した、という方も多いかも知れません。満ち欠けを繰り返しながら存在する月。夜空に浮かんだそのささやかな明かりに、私たちは何を想うのでしょうーー?

歴史を辿れば、人々にとって、 “月” は想像力を掻き立てる格好のモチーフになってきました。古くは『竹取物語』、そしてベートーヴェンの「月光」の愛称で親しまれている《ピアノ・ソナタ第14番》など。あるいは少し変化球ではありますが、夏目漱石が「I love you」の訳語として「月がきれいですね」と表現したという有名な逸話からもまた、「月」が創造のインスピレーションの源であることを意識させられますね。

 さて、フランス音楽における「月」といえば、ドビュッシーの《月の光》であることに異を唱える人はまずいないでしょう。クラシック音楽のなかでも人気の一曲です。しかし、実は他にも同名の曲が存在することは意外と知られていません。そのことを知るには、この曲の成立過程を知る必要があります。《月の光》は、ヴェルレーヌの詩集『艶なる宴』のなかに収載された『月の光』からの影響があると言われています。

『月の光』は月明かりのもと、リュートの調べに合わせて踊るイタリアの仮面劇の役者たちの様子が描写されます。彼らは愛や人生の勝利というものを歌い、その歌は月夜に溶けていくのです。一見すると陽気なシーンなのですが、実は役者たちは仮面の下では悲しげで、歌の内容は全く信じていません。仮面の表と裏で異なるのです。そこにある、真と嘘、隠と陽といった相反する概念が実は紙一重できれいに二分できないその曖昧さと、月夜の幻想的な様(さま)が見事に重ね合わせられたものになっています。

 ドビュッシーはこの詩に曲をつけシャンソンとして発表しました。しかも2曲も(歌詞が同じで伴奏が異なります)。有名な『月の光』は詩の内容をダイレクトに表現したものではありませんが、歌曲はより詩と音楽が密接に絡み合っています。また、ドビュッシーと同時代に活躍したフォーレも歌曲『月の光』を作曲しており、いかにヴェルレーヌの詩が当時の作曲家を魅了していたかがよく分かります。ちなみに、ヴェルレーヌの『月の光』の創作を紐解けばさらにある画家が存在が見えてくるのですが……ここまででだいぶ長くなってしまいました!(苦笑)

続きの散歩が気になる方はぜひ、ご自身で調べてみてくださいね。秋は気候も落ち着くので月夜の散歩も、楽しそう。そんなことを考えた奏子でした。ではまた!

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このコラムは Chocolat! 第657回で紹介されました。 エピソードを聴く →
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