Corot Souvenirs et Variations
本展覧会は、ルーヴル美術館所蔵の代表作群を中心に、19世紀フランスの画家ジャン=バティスト・カミーユ・コロー(1796-1875)の初期から晩年までの作品を集大成し、その魅力と秘密を再検証するものです。 コローを中心にすえた展覧会が、今回ほどの規模で開かれることは世界でも稀であり、国内においては初めてのことです。また、国際的にも初の試みとして、 印象派からキュビストまで、コロー芸術に深い影響を受けた画家たち、モネやルノワール、シスレー、ドラン、ピカソ等々の作品の数々を比較展示いたします。コローというと想起されるのが、靄がかった夢想的な風景のなかにニンフが舞い踊るといった作品でしょう。しかし古典的伝統のなかで画家修業をはじめた。
若き日のコローは、光に満ちたイタリアの風景に魅了され、3度にわたってこの地を訪れて戸外制作に励み、率直な表現が際立つ油彩習作群を 残しています。また、寒い季節はパリのアトリエでサロン出品用の大作 の構成に取り組みつつ、暖かい季節はフランス各地に写生旅行へ出か けて数々の優れた都市風景や田園風景を生み出し、その鋭敏なレアリ
スムの感覚と抜群の造形力によって風景画に革新をもたらしました。
一方、画家が研究や個人的な楽しみのために折々に手がけていた 空 想 的な女 性 像も今日高く評 価されています 。伝 統 的な図 像を自由 に組み合わせたこれらの人物画は、彫塑的な表現と確固たる存在感をもって描かれ、普遍性すら感じさ せ る も の で す 。実際、コローは、20世紀初頭の古典回帰の流れのなかでフランス美術の伝統の正統なる後継者とみなされていきました。
晩年に向かうにつれコローはかつて旅した土地を追想し、アトリエで再構成した多くの詩的な風景画を残しています。自然との真摯な対話を出発したこれらの「想い出(スヴニール)」の風景は、少しずつ叙述的な表現をはなれ、音楽的なリズムに満たされていきます。それは喚起力と連想の芸術であり、純粋に造形の力を通して、観る者 の感性を画家の心のざわめきに共鳴させていきます。 美術史上の存在の大きさとは裏腹に、決して声高に自己の芸術の 革新性を主張することはなかったコロー。他作家の作品もまじえ、油彩 画・版画約120点が一堂に会するこの機会にひととき耳を澄まし、彼の作品が持つ本質的な「近代性(モデルニテ)」の響きをお聴きください。(国立西洋美術館ニュースより)
Chocolat!第103回で紹介しています。